『2025年のデジタル資本主義』(NHK出版)刊行:「コロナショックに立ち向かうべき当事者とその武器」
NHK出版より『2025年のデジタル資本主義』を5月11日に刊行することとなり、校正も完了、表紙・装丁も以下の通り決まり、アマゾンにも本書がアップされました。⇒アマゾンサイトはこちらから
本書は帯にもある通り、「GAFAの次に来るもの」や「ポストデジタル資本主義」を論述する一方で、使命感をもって第6章では「ポストコロナにおけるポストデジタル資本主義」を最後に加えました。
それは日本人の世界観や価値観として受け入れることの困難な勢力がポストコロナにおいて覇権を握る可能性もある展開になっていることを強く危惧しているからです。
日本でも感染拡大が懸念されるなかで、本書の「さいごに」の最終項である「コロナショックに立ち向かうべき当事者とその武器」を以下の通りお贈りしたいと思います。
小説『ペスト』であらためて注目されているアルベート・カミュが様々な著作で提示してきたように、現在の状況は、人類全体が不条理の世界、さらには人間の不条理と戦っているようにも見えます。これだけの不条理さを目の当たりにすると誰もが逃げ出したくもなってくるでしょう。もっとも、不条理をテーマとするものとしてはカミュの最重要著作である『シーシュポスの神話』の中では、不条理を受け入れて生きることが生き続ける唯一の方法であるとされているのです。人生の意味は不条理を超えたところにあるということを示唆しているのです。
以上引き続きよろしくお願いいたします。
「コロナショックに立ち向かうべき当事者とその武器」
最後に、本書の「おわりに」を執筆している2020年4月現在においては、コロナウイルスの感染拡大収束は終わりの見えない状況になっています。私は、本書の第6章で、「人としてどのように在るべきなのか」という、一見すると哲学的なテーマにより多くの人たちが対峙するようになるのは、「平常時」なのではなく、究極の困窮状況や「戦時下」においてであることは人類の歴史が証明していると述べました。さらには、人は、究極の困窮状況にあり、もはや考える自由しか残されていないようなタイミングにおいてこそ初めて、自分が生まれてきた意味、人類が地球に存在している意味などを自然に考えるようになるのであると論じました。そして、NHK出版新書での前著『ミッションは武器になる』においては、究極の困窮状況である「デーモン」を打ち破る秘訣は、「武器の強さではなく、何も持たないときの強さが、本当の自分の強さなのだ」ということに気づくことであると述べました。
今、人類はこれまで犯してきた様々な破壊の罪を背負わされているようにも見えます。その一方で、自分たちがこれまでいかに恵まれた存在であったかに気づかされる機会を与えられているようにも感じます。非日常的な出来事のなかで、日常的で当たり前だった真の価値を見出すように問われているようにも思います。起きてしまっている以上、今起きている究極の困窮状況に一人ひとりが意味を見出すことを求められているようにも見えます。
小説『ペスト』であらためて注目されているアルベート・カミュが様々な著作で提示してきたように、人類全体が不条理の世界、さらには人間の不条理と戦っているようにも見えます。これだけの不条理さを目の当たりにすると誰もが逃げ出したくもなってくるでしょう。もっとも、不条理をテーマとするものとしてはカミュの最重要著作である『シーシュポスの神話』の中では、不条理を受け入れて生きることが生き続ける唯一の方法であるとされているのです。人生の意味は不条理を超えたところにあるのです。
あなたにとっての「武器」とは何でしょうか? そして「武器」を持たないときのあなたとは何でしょうか? コロナウイルスの脅威に接しているなかで、最後にあなたやあなたの大切な人を守るのは、国や企業などではなく、「武器」を持たないときのあなた自身の本当の強さなのです。そして、それは、日常的で当たり前だったような物事の真の価値をここで再発見し、今起きている究極の困窮状況のなかであなた自身が生きる意味を見出し、それを希望に変えていくことであると私は信じています。本書が、あなたが「武器」をとったときに残るもの、あなた自身が必ずもっているあなた自身の本当の強さを再発見することの一助になれば幸いです。
田中道昭
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