中国BAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)の1社で検索・自動運転・AIの中国最大手企業であるバイドゥの本社海外部門総括総経理兼バイドゥジャパン代表である張社長と講談社の現代ビジネス及びデジタルシフトタイムズの連動企画で昨日午前中に対談を実施いたしました。中国における自動運転やAIの最新動向をお伺いしました。
バイドゥについては、『GAFA×BATH』(日本経済新聞出版社)や『2022年の次世代自動車産業』(PHP)においても分析を行ってきましたが、特に後者の書籍においては、全477ページの内73ページにわたって同社の徹底分析を行っています。2019年3月には北京において同社の自動運転ミニバスにも試乗等をさせていただきました。
今回の対談では、特に昨年1月からのバイドゥの主要ニュースをカバーし、その戦略についてお話しをお伺いしました。
私がまず注目したのは、次世代自動車産業や自動運転の世界では、「デジタルインフラ」とまで呼ばれているダイナミックマップの分野において、米テスラが中国においてバイドゥマップの採用を行うことを昨年1月に発表したこと。
また昨年9月15日にオンラインで開催されたBaidu World 2020においてロビン・リー会長が行った同社自動運転プラットフォームプロジェクトであるアポロ計画の進捗状況発表。自動運転車アポロGoを量産車としてスタートすることや自動運転バスの運行を重慶等の都市ですでにスタートさせていることなどを発表。同イベント内では北京公道を走行する自動運転車の模様が詳しく紹介されましたが、今回の対談動画ではその日本語版を特別にご提供いただけることになりました。
さらにバイドゥは、本年1月11日にボルボ及びダイムラーの筆頭株主にもなっている中国自動車メーカー吉利と提携してEV車製造にも乗り出すことを発表。3月23日のバイドゥ香港上場時のインタビューにおいてロビン・リー会長は、自動運転プラットフォーム×ソフトウエア×ハードウエアの総合的な戦略の一環であることを述べていますが、同戦略についても対談でもお伺いしています。なお、吉利では1月15日にアップル製品の製造受託でも有名な台湾のホンハイとEV車製造プラットフォームを構築していくことを発表しており、自動車産業がディスラプトされ、新たな戦いの構図が見えてきていることを感じています。
なお、『GAFA×BATH』においても米中新冷戦を分析し、政治・経済・社会・テクノロジーのすべてが表裏一体・不可分となっているなかで、現時点において中国企業を取り上げる難易度も痛感しています。私自身が人権問題も安全保障の問題もビジネスと無関係であるとは思っていないからです。またバイドゥ側としても、現時点でテクノロジーの進化を誇示することよりはローキーで慎重な広報戦略で行くことを最重要視しているなかで、今回の張社長のご登壇には本当に大きな制約が社内でもあったと思います。そんななかで、「コロナ禍で海外の状況が日本に伝わりにくくなっている」「今年のCESで中国IT大手が軒並み参加を見送り同テクノロジーショーが“片落ち”となっていたなかで、日本企業に中国企業の進化を伝え、より高い危機感と問題意識をもってもらいたい」という私の使命感に張社長がご賛同いただき、今回の企画が実現したことを本当に有難いことであると感謝しております(ここで述べているスタンスについては対談冒頭でも述べております)。
講談社の現代ビジネス及びマネー現代での記事配信が2週間以内、デジタルシフトタイムズでの動画及び記事配信が4月下旬を予定しております。
以上引き続きよろしくお願いいたします。
田中道昭