本日5月12日(水)のテレビ東京ワールドビジネスサテライトにおいて、ソフトバンクグループの2021年3月期決算結果についてコメントさせていただきました。
日本企業として史上最大規模の純利益4.9兆円を記録したソフトバンクグループ。
「今の日本に不足しているのは大ボラ=ビッグビジョン」と語ってきた孫社長、大きな夢を実現している、素晴らしい経営者であると尊敬しております。
決算結果については、私自身としては、以下のように分析しております。ご参考にしていただけたら幸いです。
以上引き続きよろしくお願いいたします。
【ソフトバンクグループ“4.9兆円純利益決算”への評価】
*純利益での比較
純利益水準で見たら、日本企業としては過去最大規模(過去:トヨタ約2.5兆円、18/3期)、GAFAと比較してもApple約6兆円(20/9期)、Google約4.2兆円(20/12期)等に対して優れた結果。
*SBGをどのように評価すべきか?
SBGの実態は投資会社。純利益の大半は、未実現利益、含み利益で、大半は事業自体で創造した利益ではない。評価すべき指標はNAV(株式価値)やIRR。投資会社の評価を期間損益ベースでの純利益では行わない。事業会社であるトヨタやGAFAと単純に純利益で比較するのは定量分析としては妥当ではない。
*孫社長の自己評価は?
孫社長自身が注視している指標もNAV(株式価値)や時価総額。特に個人的な目標は時価総額でGAFAレベルになること。したがって本人も純利益で最高水準ということを本音でもすごいとは思っていないのでは。
*それでも評価すべきこと
その一方で、「日本企業が定量的にGAFAを超えること」を実現する方法としては、自らを投資会社に変革させ、純利益とは言えどもGAFAに次ぐ水準にしてきたことは評価されるべき。
*SBGの強み
SBGがこの1年評価できることは、守りを徹底しながらも攻めも同時に行ったこと。軌道修正をスピーディーに行い改善も積み重ねている。コロナ禍直後にスピーディーに持ち株を資金化して資金繰り懸念を払拭、その代り金をコロナ禍での上昇相場に投資した。また属人的だったファンド運営もより組織化している点も評価できる。孫社長の強みや凄さはこれらにも投影されているスピーディーな軌道修正能力。
*アリババ依存からも脱却
1年前まではアリババ依存でアリババへの持ち株時価をSBGの時価総額が下回っていたが、アリババ依存からも脱却し、株式評価も高めつつある。
*SBGと孫社長に求められること
日本を代表しGAFAとの比較までされるようになったSBGや孫社長に求められるのは、決算結果やDX投資・AI投資の成否だけではなく、いかに本業を通じて脱炭素等の地球環境問題や人種差別等の問題に取り組むかということ。欧米の経営者は決算発表等の場で、業績だけではなく、こういった課題にいかに本業で対峙しているかを述べるのが当然の責務になっている。SBGや孫社長にはこの点が最も求められている。また「投資会社」「ファンド事業」を標榜している以上、投資資金は外部投資家からも獲得すべきであるなかでまだこの点はリカバリーできていない。ビジョンファンド立ち上げ時のように外部投資家からビジョンファンドへの投資資金が集まるようになるかがSBGを真に評価するポイント。
田中道昭